動かない「モノ」を撮る

鉄道ファンの聖地

辺境を走る蒸気機関車やディーゼル車は、鉄道ファンの憧れです。たとえばモンゴルを縦断するウランバートル鉄道、いつまでもこの勇姿で走り続けて!と願わずにいられません。四川省の芭石鉄道。泥臭い荒削りの魅力が次第に失われていき、観光路線へ向かうのでしょうか。今すぐ駆けつけたいのに、モンゴルも四川も遠く、ゴビ砂漠の旅はずっと夢のままです。

そこで身近なところで魅力発掘。熊本から肥薩線を南下して、球磨川橋梁、大畑、矢岳のトンネルを通り、吉都線で高千穂の峰を探してみましょう。濃縮された宝の旅があります。
しかしここにも障害発生。気力と体力、そして何より好奇心を保つのは難しい。

建物に漂う人物像

そういうわけで、同じく鉄製でも動力抜きの、建造物へ目移りしました。
月並みですが鉄骨代表は、何といってもエッフェル塔と東京タワーです。四角と三角で気負いなくシンプル、しかも優美です。怪獣やゴジラから何度破壊されたことでしょう。正義の味方ウルトラマンも力及ばず、私たちは東京タワーが倒れるのを見たいのです。こうして大人になったので、エレベーターには相変わらず長蛇の列ができています。

次いで、レトロな建物から2件をご紹介。
まず、東京庭園美術館の旧朝香宮邸。意匠を凝らし贅を尽くしたアール・デコ様式の館です。目黒白金の一等地にあって広い森に囲まれ、持ち主は転々としつつ、カラスも住んでいます。

次に、池袋にある自由学園、いまは教室単位でレンタルもできます。設計はフランク・ロイド・ライト。羽仁もと子氏は、贅沢はできないと重鎮ロイド氏を説得し、総工費は少ない予算に収められたと聞きました。
建物は絵画や音楽に似て、住んでいるひと、建てた人の思い入れが伝わってきます。その中に立って少しでも共感できると、制作者の喜ぶ声が聞こえて来そうです。

忘れていた建物群

その都度、備忘録にと書き留めた記録を整理してみると、好みが偏っていて可笑しくなりました。神社仏閣は名所ではなく、桜や紅葉の背景にあったからです。後日整理するつもり。